『ボヘミアの醜聞』は、シャーロック・ホームズ・シリーズの中で、最初に発表された短編小説です。初めて発表されたのは、1891年7月の『ストランド・マガジン』で、現在は『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されています。
ホームズが唯一「あの女性」と呼ぶ人物(アイリーン・アドラー)が登場する本作は、時代を超えて読者の好奇心を刺激しますね。
発表されてから、今日まで変わらぬ人気をキープ!
それでは、『ボヘミアの醜聞』のあらすじやネタバレをご紹介します♪
スポンサードリンク
ワトスンは結婚して開業医に戻り、ホームズとは疎遠になっていた。
往診でベイカー街を通りがかったワトスンは、無性にホームズに会いたくなり、訪ねてみることにする。1888年3月20日のことだった。
久しぶりにワトスンと会ったホームズは、ワトスンの幸せ太りを指摘し、充実した結婚生活を送っていることを確認する。
そして、ホームズは一通の手紙をワトスンに見せ、手紙はボヘミア製の紙で、差出人はドイツ人と推理した。
やがて、手紙の中に書いてあった「ある人物」と見られる男がホームズを訪ねてきた。
大柄で高貴な身なりをした男は、黒いマスクで顔半分を隠していた。
男は自らを「フォン・クラム伯爵」と名乗るが、ホームズは彼がボヘミアの国王であることを見抜いた。
国王は王太子時代、ワルシャワに滞在中、アイリーン・アドラーというコントラルト歌手と恋仲になった。そして、その時撮影した二人の写真を取り戻したいという。
「アドラーは、写真の引き渡しを拒否していて、婚約者であるスカンジナビア国の王女に写真を送りつけると、脅迫してきた」と、国王はホームズとワトスンに説明する。
馬丁に変装したホームズは、同業者からアイリーン・アドラーについての情報をいろいろと聞き出す。そして、ゴドフリー・ノートンという弁護士が、頻繁にアドラー邸に出入りしていることを掴んだ。
ホームズがアドラー邸を見張っていると、ノートンとアイリーンが、慌しい様子で相次いで家を出た。
2人の後を追ってたどり着いた教会。
馬丁に変装したホームズが偶然を装って教会内に入ると、突然ノートンに結婚式の立会人を頼まれる。
ぐずぐずしていると、2人は新婚旅行でイギリスを離れ、写真を取り戻すことが難しくなる。
そう判断したホームズは、写真の隠し場所をつきとめるため、ワトスンの協力を得て、一芝居打つ。
スポンサードリンク
ホームズは写真を取り戻すことに失敗した。
牧師に変装し、喧嘩に巻き込まれてケガをしたフリをして、まんまとアドラー邸に侵入したホームズ。
火事の発生を演出し、写真のありかをつきとめ、翌日ボヘミア王、ワトスンとともにアドラー邸を訪れたホームズだったが、アイリーンはすでにイギリスを発った後。
アイリーンは牧師が変装したホームズだと気づき、男装してホームズを尾行、本人と確信し(ホームズに挨拶をした通りがかりの青年がアイリーン)、先手を打ってゴドフリーと共にイギリスを離れたのであった。
彼女の置き手紙には、これまでのいきさつと、写真は国王の婚約者に送ることはせず、何かあったときのお守りとして取っておく旨が書かれていた。
任務を遂行できなかった、しかも女性にしてやられた今回の一件は、ホームズに強烈なインパクトを残すことになる。
さらに、これまで女性の知恵は劣るものと考えていたホームズの常識を、大きく覆した。
この経緯から
彼がアイリーン・アドラーのことを口にするとき、またはその写真のことに触れるとき、つねに彼女には〝あの女性〟なる敬称が冠せられるのである。
引用:アーサー・コナン・ドイル.シャーロック・ホームズの冒険【新訳版】シャーロック・ホームズ・シリーズ(創元推理文庫)(KindleLocations618-620).