日本語訳には『僧坊荘園』や『アベ農園』などのタイトルもありますね。
『アビー荘園』は、36番目に発表されたシャーロック・ホームズ・シリーズの短編小説。
初めて雑誌に掲載されたのが、イギリス『ストランド・マガジン』(1904年9月号)です。
1905年に『シャーロック・ホームズの帰還』 に収録されました。
田舎の富豪が強盗に殺害されるという事件が発生。
現場の状況や、容疑者がすでに浮上していることから簡単に解決できると考えられていましたが…
ホームズの事件解決に向けた情熱を感じるお話です!
それでは、アビー荘園のあらすじからネタバレまで解説します!
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1897年、寒さがひときわ厳しいある冬の日。
ホームズに寝ているところを起こされたワトスンは、追い立てられるまま辻馬車に乗り込んだ。
ホームズは、スコットランドヤードのスタンリー・ホプキンズ警部からの手紙を読み上げ、ワトスンに事件の概要を話す。
事件が起きた邸宅に到着したホームズとワトスン。
2人を出迎えたホプキンズ警部は、サー・ユータスが殺害されたことと、容疑者としてルーイシャムの強盗団(ランドル家の三人組)の名が挙がっていることを告げる。
被害者の妻である、メアリー・ブラックンストールと面会したホームズは、彼女の腕についている赤い斑点に注目する。
ブラックンストール夫人によると、彼女はイギリスの堅苦しい生活と、夫の飲酒グセに嫌気が差していて、夫の関係はかなり冷え切っていた。
事件が起きたのは、夫人が寝る前に家の見回りをしていた時だった。
ダイニングルームで外から侵入してきた賊と鉢合わせになり、椅子に縛り付けられた。
そこへ入ってきたのが夫で、賊の一人に火かき棒で殴られ絶命する。
その後賊は金目の物を盗んでいったという。
事件が起きた現場を入念に調べるホームズ。
夫人を縛った呼び鈴の紐を見ていたホームズは、呼び鈴の紐を引きちぎれば誰かが気づくことはわかっているのに、あえて引きちぎった点に注目した。
夜は本館にはブラックンストール夫妻と夫人のメイドであるテリーザ・ライトしかおらず、残りの使用人たちはみな別館に引き上げている。
ホームズとホプキンズ警部は、犯人はこの家の事情に詳し人物ではないかと予測する。
さらに現場を調べていたホームズたちは、サイドボードの上に置いてあった3つのワイングラスを見つける。
ワイングラスには赤ワインの飲み残しが確認された。
ワイングラスの近くには栓が抜かれたワインボトルが残されていた。
わずかな疑問は残るものの、
容疑者は依然としてルーイシャムの強盗団に変わりはなかった。
ホプキンズ警部もその線で捜査を進める姿勢を見せている。
一通り調べ終わったホームズは、ワトスンとともにロンドン行きの汽車に乗り込んだ。
しかし、ホームズは途中の駅でワトスンとともに降りてしまった。
偶然降りた駅で、ホームズとワトスンはブラックンストール夫人の供述と、残されたワイングラスについて再考察する。
そして、チズルハースト行きの汽車に飛び乗り、アビー荘園へと舞い戻った。
ホームズはダイニングルームに鍵をかけると、再び入念に調べ始めた。
やがて検証が終わったホームズは、ワトスンに「犯人は一人だ」と告げる。
ブラックンストール夫人に、真実を打ち明けてほしいと告げるホームズ。
しかし、夫人は「全てお話しました」と拒絶する。
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犯人は、ジャック・クローカー。
メアリーに思いを寄せていて、テリーザからメアリーの現状を聞かされたことをきっかけに、激しく夫を憎むようになった。
航海に出発する前にメアリーに会おうと、彼女の邸宅を訪れる。
その時夫がダイニングルームに飛び込んできて、メアリーを叩き始めた。
ジャックはとっさに火かき棒を握り、夫の頭上に振り下ろしたのだった。
メアリーの悲鳴を聞きつけ駆けつけたテリーザとともに、ジャックは強盗が入ったように現場を見せかけ立ち去った。
ジャックが真実を語り、メアリーに対して誠実であることを確認したホームズは、「正規の裁判方式」で、収拾をつける選択をする。
「陪審員」となったワトスンは、ジャックに対して「無罪」を宣言。
「裁判長」であるホームズは、ジャックを無罪放免とし、1年後メアリーのもとに戻るよう伝えた。