『四つの署名(The Sign of Four)』は、シャーロック・ホームズ・シリーズ2番目の作品で、1890年にリピンコッツ・マンスリー・マガジンの2月号に掲載されました。本作品は、『緋色の研究』に次ぐ2番目の長編小説でもあります。
退屈な日々を過ごしていたホームズのもとに舞い込んだのは、イギリスとインドの2カ国を舞台にした、大きな事件の臭いがする相談でした。
見えそうで見えない犯人像、そして捕まりそうで捕まらない、逃げ足の早い犯人というふうに、スリリングなストーリー展開に心を奪われること間違いなし! 相談を持ち込んだメアリー・モースタン嬢に憧れを抱くワトスンの、恋の行方も気になります。
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退屈な日々をコカインで紛らわしていたホームズ。
ある日、メアリー・モースタンと名乗る若い女性が事件の相談にホームズのもとを訪れた。
彼女の雇い主はセシル・フォレスター夫人。ホームズが過去に事件解決に尽力したことがあった。
モースタン嬢は、ホームズとワトスンに、自身が抱えている"事件"について語り始めた。
彼女は幼い頃母を亡くし、インドに駐留する連隊の将校であった父と離れ、イギリスの寄宿制女学校で過ごす。そして、17歳の時、父が休暇を取ってイギリスを訪れたという電報を受け取る。ロンドンにある待ち合わせのホテルに到着したが、父は昨日からホテルに戻っていないということだった。
その翌日も父が現れなかったことから警察に届けを出したり、新聞に広告を出したりしたが、父を発見する手がかりは得られなかった。10年たった現在も、父の消息はつかめないままだ。
父には、ショルトー少佐というロンドンに住んでいる知人がいた。しかし、ショルトー少佐は父が消息不明どころかロンドンに訪れたことさえ知らなかったという。
そして約6年前、メアリーは新聞の広告欄に、誰かが自分の現住所を名乗り出る旨の尋ね人の広告を見つけた。メアリーが現住所を広告欄に掲載すると、一粒の真珠が入った小包が届いた。以来、毎年同じ日に真珠が入った小包が届くようになる。
話し終えたメアリーは、本日届いたという手紙をホームズに渡した。手紙には、ライシャム劇場の近くに午後7時に、"友人2名"とともに来るよう書かれていた。ホームズは二つ返事でメアリーの件を引き受け、用事を済ませたらワトスンとともに待ち合わせ場所に行くことを約束した。
外出先から戻ってきたホームズは、ワトスンにショルトー大佐は1882年に亡くなっていることを告げる。ホームズは、ショルトー大佐がなくなった直後から、メアリーのもとに例の小包が届き始めた点に注目する。
メアリーと落ち合ったホームズとワトスン。メアリーは、父のデスクで見つけた解読不明な書類をホームズに渡す。
書類を精査したホームズは、それが今後の事件のカギを握る大事なものであることを直感し、メアリーに大切に保管しておくよう告げる。
ライシャム劇場に到着した3人は、そこで御者の服装をした男に声をかけられ辻馬車に乗り込んだ。
馬車はウソンズワース・ロードを抜け、とあるテラス式住宅街で止まった。そこでホームズたちは、頭にターバンを巻いたインド人の召使いの案内で、邸宅の主であるサディアス・ショルトーと面会する。
サディアスは、ショルトー大佐の息子であり、手紙の差出人。
サディアスは、父について話し始めた。ショルトー少佐は、常に何かに怯えているようだった。特に、"木の義足を付けた男"を警戒していたという。
そして、1882年初頭に、ショルトー大佐のもとに手紙が届く。それを読んだショルトー大佐は大きなショックを受け、そのまま寝込でしまったのだ。
見舞いに訪れたサディアスと兄は、ショルトー大佐から、思わぬ告白を聞かされる。
インド在住時、ショルトー大佐とモースタンは、ひょんなことから財宝を手に入れた。ショルトー大佐は財宝とともに一足先にイギリスに帰国する。その後、モースタンはショルトー大佐のもとを訪れ、自分の分け前を要求したが、ショルトー大佐は、それを拒んだ。口論の途中でモースタンは体勢を崩し、頭を櫃の角にぶつけ絶命してしまう。そして、口論の一部始終を聞いた召使いのラル・チャウダルとともに遺体を始末したのだ。
ひと通り話し終えたショルトー大佐は、財宝のありかを息子たちに告げようとしたが、窓から覗いている不審な人物に気付くと、恐ろしい形相を浮かべながら「あいつをつまみ出せ! 」と叫び絶命してしまう。
次の朝、ショルトー大佐の部屋を確認しに訪れた兄弟は、何者かが室内を荒した形跡を発見する。さらに、ショルトー大佐の胸元には、「四の符牒」となぐり書きされたメモが置かれていたという。
昨日財宝が発見され、ショルトー兄弟は、モースタン大佐の娘であるメアリーに、に連絡を取ることを決めたという。ただし兄のバーソロミューは、分配に乗り気ではなかった。
サディアス、ホームズ、ワトスン、モースタン嬢の4人は、馬車を飛ばしてバーソロミュー邸を訪れた。
そこで4人は、変わり果てた姿となったバーソロミューを発見する。
ショルトー大佐の時と同じように、「四の符牒」となぐり書きされた紙片が遺体のそばに落ちていた。
現場検証を行っていたホームズは、窓框に残っていた靴の跡と、視t内に義足でつけた跡を発見する。犯人は2人組だと気付いたホームズは、それぞれの収入経路を推測する。一人は窓からで、もう一人は天井。屋根裏を調べたホームズとワトスンは、天窓から犯人が侵入したことを突き止めた。屋根裏に残されていたのは、小さな無数の足跡だった。
アセルニー・ジョーンズ警部が、ショルトーとともに事件現場にやってくる。現場を調べたジョーンズは、サディアス・ショルトーが犯人と判断し、逮捕する。ホームズは、ワトスンにモースタン嬢をセシル・フォレスター夫人宅へ送り届けたあと、指定した店の店主から、トービーという名の犬を借りてきてほしいと
ワトスンがトービーを連れて事件現場に戻ると、ジョーンズ警部が家の使用人たちを連れて引き上げた後だった。ホームズとワトスンは再び屋根裏に向かい、残された足跡を調べた。さらに、犯人が逃走したと見られる経路を辿ったホームズは、犯人が落としたとみられる毒針が入った巾着を発見する。
ホームズはトービーに犯人の臭いがしみついたハンカチを嗅がせて、追跡させた。
トービーが立ち止まったところには、木の義足でつけられた足跡が残っていた。
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犯人は、ジョナサン・スモールと矮人のトンガ。ショルトー少佐がインドから持ち出したアグラの財宝を取り戻そうと殺害を企てた。
スモールによると、アグラの財宝の持ち主は、スモールとアンダマン島の流刑囚収容所にいる3人の男たち。
殺人現場に残されていた「4つの符牒」は、彼ら4人を意味する。アグラの財宝の存在を知った彼らは、財宝を4等分し決して裏切らないという誓いを立てたのである。
スモールは、部下だったモハメッド・シンとアブドゥラー・カーンから、あるラージャが溜め込んでいるという財宝の話を聞く。そのラージャは、戦後にも財産を残しておこうと、複数の場所に隠すことにした。その一つに選ばれたのが、アグラの要塞。ラージャに財宝を託されたアーフメットという人物は、ドスト・アクバルというカーンの乳兄弟を従えて、スモールたちが見張っている門へとやってきた。
4人は計画どおりにアーフメットを殺し、財宝を奪った。ところが、後日、4人はアーフメット殺害の罪で逮捕され、終身刑を言い渡される。
服役中に、スモールはショルトー少佐とモースタン大尉と知り合う。ショルト-少佐が賭け事で大きな借金を作ったことを知ったスモールは、「自由の身にしてくれる代わりに財宝の5分の1をあげる」と、2人に取引を持ちかける。
取引が成立し、ショルト-少佐は宝が本当にあるかどうか確かめるためインドに渡った。しかし、そのまま財宝とともに姿をくらましてしまった。
ショルト-少佐殺害に執念を燃やしたスモールは、トンガの協力で島を脱出。ロンドンへたどり着き、ついにショルト-少佐の住まいを見つけた。
しかし、ショルトー少佐は、スモールが手を下す前に亡くなった。内定者(おそらくラウ・チャウダル)の情報で財宝のありかを突き止めたスモールとトンガは、バーソロミューに忍び込んだ。財宝を盗むだけという予定っだったにもかかわらず、トンガは偶然に合わせたバーソロミューを殺害してしまう。
”署名者たち”と財宝を分けるためにモーディカイ・スミスの船で脱出を試みたスモールだったが、ホームズやジョーンズ警部らに追跡されて逮捕される。
事件は無事に解決するが、財宝はすでにスモールがテムズ川にばらまいてしまった後だった。
メアリーが手にした櫃は空っぽ。それを目にしたワトスンは「神よ、感謝します!」と叫び、メアリーに求婚する。
ワトスンはホームズに、モースタン嬢と結婚することを伝える。と同時に、ホームズとの同居解消を告げたのだった。