『ブルースパーティントン設計書』は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説で、イギリスの『ストランド・マガジン』1908年12月号に掲載されました(アメリカでは『コリアーズ・ウィークリー』1908年12月18日号に掲載)。1917年に第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』が刊行されましたが、『ブルースパーティントン設計書』も他の短編小説と一緒に収録されています。
コナン・ドイルは、56の短編小説(シャーロック・ホームズシリーズ)を書きましたが、『ブルースパーティントン設計書』は39番目に発表されたものです。
ある青年の、他殺と見られる遺体が発見されましたが、それはシャーロックのお兄ちゃん、マイクロフトをはじめイギリス国家を巻き込む大事件に発展!
短編小説ながら設定が壮大!
それではあらすじから見てみましょう~。
※あらすじは、アーサー・コナン・ドイル著『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』(創元推理文庫)を参考にしています。
シャーロック・ホームズは、実兄のマイクロフトから電報を受け取る。電報にはカドガン・ウェストという青年の件で訪問したい旨が書かれていた。
ウェストはウーリッジの兵器工廠事務官で、ロンドンの地下鉄の線路で遺体となって発見されたとニュースになったばかりだった。
ウェストを最後に見かけられたのは、地下鉄オールド・ゲート駅で(後にウリッジ駅が最後ということがわかる)、遺体が発見されたのは駅付近だった。
金品はそのまま残されていたが、ウェストは電車の切符を所持していなかった。
マイクロフトがレストレード警部とともにホームズの元を訪れる。
マイクロフトの話によると、ウェストのポケットには、「ブルースパーティントン設計書」と呼ばれる技術資料が7枚入っていた。
この設計書は、イギリスが設計を予定していた潜水艦で、国家機密としてウーリッジの兵器工廠に厳重に保管されていたのだった。
その設計書が持ち出された上、10枚ある設計書のうち、最も大切とされている3枚が不明になっていることが分かった。
もし不明の設計書が敵国の手に渡れば、イギリス国家が重大な危機にさらされる。
事態を大変重く見たマイクロフトは、ホームズに一刻も早く捜査を開始し、事件解明に全力を上げるよう要請する。
ホームズ、ワトスン、レストレードの3人は、オールドゲート駅に到着する。
線路周辺を調べていたホームズは、遺体が発見された場所はポイントとカーブが多いことに注目した。
ウェストは遺体が発見された現場とは別の場所で殺害された可能性が高かったが、遺体は屋根からずり落ちたと推測する。
国際的に活動するスパイが犯罪に絡んでいると推測したホームズは、めぼしい人物をリスト化するようマイクロフトに電報を打った。
ブルースパーティントン設計書が保管されていた金庫の鍵は、ジェームズ・ウォルター卿とシドニー・ジョンスン2名のみ。
事情を聞こうとウォルター卿邸を訪れたホームズは、ウォルター卿が早朝亡くなったとの訃報を聞く。
ジョンスンは、自分自身もウォルター卿も金庫の鍵を肌見放さず持ち歩いていたという。
犯人は合鍵を作った可能性が高まったが、施設内の人間であれば、設計書を盗み出すよりも書き写した方が早く、リスクも低くなる。なのになぜ設計書を盗む選択をしたのか、という疑問が残った。
ウェストの母親と、ウェストの婚約者であるヴァイオレット・ウェストベリーのもとを訪れたホームズとワトスン。
ウェストベリーは、ウェストが失踪する直前まで一緒にいた人物。ウェストベリーによると、2人が兵器工場の前を通りかかった時、ウェストは何も言わずに姿を消した。
また、以前から外国人のスパイが設計書を狙っていると心配している様子を見せていたという。
ウリッジ駅でウェストを見かけた駅員の証言から、ウェストが利用した列車が特定された。
ホームズとワトスンがベイカー街に戻ると、マイクロフトから返信が届いていた。
それを読んだホームズは、心当たりがあると一人ででかけてしまう。
しばらくしてワトスンのもとに、ホームズから、ゴルディーニ・レストランで食事をしているから来るようにとの電報が届く。
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ここからは小説のネタバレになります。ご注意!
黒幕は、フーゴー・オーバーシュタインで、共犯はヴァレンタイン・ウォルター大佐。
オーバーシュタインは外国人スパイで、ブルースパーティントン設計書を狙っていた。
そして、多額の借金を抱えて途方に暮れているウォルター大佐に目をつけ、5千ポンドで設計図を盗み出すことを持ちかける。
ウォルター大佐は兄のウォルター卿の合鍵を持ち出し、金庫から設計図を盗み出した(兄のウォルター卿は弟のしたことに気づいたため、自殺したと考えられる)。
しかしその現場をウェストに見つかり、オーバーシュタインの屋敷で口論となる。
オーバーシュタインはウェストを殺害、家の窓のすぐ近くに停車した汽車の屋根に遺体を置いた。
オーバーシュタインは3枚の設計図とともに国外に逃亡するが、ウォルター大佐の「もう1枚重要な設計図がある」という手紙におびき出され、イギリスに戻ったところを逮捕された。
オーバーシュタインが持ち出した設計図も無事に取り戻すことができた。
オーバーシュタインは、マインクロフトがリストに挙げた、スパイの一人。
さらに彼の屋敷は線路の近くにあった。
ホームズはそこに目をつけ、オーバーシュタインの屋敷に侵入、ある部屋の窓の真下に汽車が停車することを確認、殺人現場を特定した。
これは全くの偶然。
オーバーシュタインの屋敷で、新聞広告を使った通信記録を発見したホームズとワトスンは、「ピエロ」になりすまし、広告を打つ。
広告の呼びかけに応じ、オーバーシュタイン宅にやってきたのが、ウォルター大佐だった(ホームズはまさか彼がやってくるとは想像していなかった)。
無事にブルースパーティントン設計書を取り戻したホームズは、その功績を称えられ、ウィンザー城に招かれる。
ベイカー街に戻ってきたとき、ホームズの胸元には、エメラルドのタイピンが輝いていたが、それは「さる優渥なる貴婦人」から贈られたものだった。