『海軍条約事件』(『海軍条約文書事件』とも呼ばれます)は、シャーロック・ホームズ短編シリーズの、56番目に発表された作品です。
初登場は1893年10月号の英国『ストランド・マガジン』で、その後『シャーロック・ホームズの思い出』に収録されました。
今回はワトスンの友人が依頼人の事件、しかもそれは国家レベルの一大事!
さて、どんな推理が展開されるのでしょうか。
ここでは『海軍条約事件』についてあらすじ・登場人物・ネタバレについてご紹介します。
目次を設置していますので、読みたい項目だけ読む、というのもありですよ♪
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※あらすじは、アーサー・コナン・ドイル著『回想のシャーロック・ホームズ【新訳版】 (創元推理文庫)』を参考にしています。
結婚してまもない7月、ワトスンのもとにパーシー・フェルペスから手紙が届く。
フェルペスはワトスンの2歳年上で、学生時代仲が良かった。
フェルペスの伯父は保守党のホールドハースト卿で、フェルペスはケンブリッジ大学卒業後、伯父のコネで外務省に入省、現在は外務省の高官として活躍していた。
手紙の中でフェルペスは、自分のキャリアが吹き飛ぶほどの大事件に直面、ホームズとともに面談を希望していることをワトスンに訴える。
ベイカー街を訪れたワトスンは、ホームズにフェルペスからの手紙を見せる。
手紙を読んだホームズは、フェルペスと手紙を書いたとされる女性に興味をそそられ、フェルペスに会うことを決めた。
フェルペスのいるブライアブレー荘に到着したホームズとワトスン。
ジョーゼフ・ハリスンと名乗る男性が初めに対応、フェルペスの婚約者・アニーの兄と自己紹介する。
ジョーゼフは2人をフェルペスの部屋に案内した。
フェルペスの隣には婚約者のアニーが座っていた。
フェルペスはホームズとワトスンに、これまでの経緯を説明する。
フェルペスは外相となった伯父から、機密条約の原本を受け取った。
その機密条約はイタリアとイギリスの間で交わされたもので、内容が報道機関に漏洩することを恐れた伯父は、フェルペスに原本を託し、写しを作るよう指示。
フェルペスは伯父に言われたとおり、チャールズ・ゴローという男性職員が退庁した後、作業に取り掛かった。
眠気や疲れによって作業が思うようにはかどらないフェルペスは、用務員にコーヒーを頼む。
しかし応じたのはいつもの人物ではなく大柄の女だった。
いつまで経ってもコーヒーが届かないため、フェルペスは執務室を出て用務員詰め所に向かう。
いつもの用務員が寝ていて、ケトルの中のお湯が煮え立っている。
用務員を揺り起こそうとした瞬間、ベルがけたたましく鳴った。
ベルは執務室からのもので、何者かが部屋にいると気づいたフェルペスは、一目散に執務室に戻った。
机には写しは残されていたものの、原本だけが消えていた。
用務員とともに通用口からチャールズ街に出ると、教会の鐘が3つ鳴る(10時15分前)。
街角に立っていた巡査に聞くと、通ったのは用務員の妻だけとのことだった。フェルペスは妻に疑惑の目を向けるが、用務員は否定し、逆方向を探そうとする。
用務員とともに建物に戻ったフェルペスは、手がかりが残されていないかどうか建物内をくまなく探し回ったが、何一つ見つからなかった。
その後スコットランドヤードのフォーブズ刑事とともに、フェルペスは用務員の自宅を訪れる。
帰宅したタンギー夫人は2人がいることを知ると、キッチンに直行した。
夫人の行動に疑問をいだいたフォーブズ刑事は、夫人の身柄を拘束、3人でスコットランドヤードに戻る。
その後夫人の身の潔白が証明されると、フェルペスはショック状態に陥り、警官の一人に連れられてウォタール-駅から列車に乗るが、その時に近くに住んでいるフェリア先生と偶然に会う。
自宅に戻ったフェルペスは脳炎となり、9週間寝込んでしまう。
話をすべて聞いたホームズは、次の日同じ列車に乗って戻ることをフェルペスに約束、ベイカー街に舞い戻った。
ホームズとワトスンが再びフェルペス宅を訪れると、フェルペスはひどく怯えた様子で、昨夜のことについて語りだした。
真夜中、一人で寝ていたフェルペスは、窓際から聞こえてくる物音で目を覚ます。
鎧戸を開くと、窓際にうずくまっている男を発見、男はすぐに逃げ出した。
男はマントを身にまとい、手には武器を持っていたという。
ホームズ、ワトスン、フェルペス、ジョーゼフの4人は証拠がないか家の外を見て回る。
その後ホームズは一足先にアニーに近づき、一晩部屋にいるよう依頼。
ホームズは、フェルペスを連れてロンドンに戻ることを提案する。
ところがホームズは、ウォーキング駅に着くと、自分はここに残ると言い出した。
ワトスンとフェルペスはホームズを信じ、ウォーキングを後にする…
ウォーキングに残ったホームズは、フェルペスが過ごした部屋を見張っていた。
犯人は部屋に原本を隠し、それを取りに来ると推理したからだった。
ホームズに言われたとおり、部屋に居続けるアニー。
やがて夜になり、アニーは鍵をかけて部屋を出た。
さらにホームズが粘っていると、誰かが部屋の窓をこじ開けるのが見えた。
人影が部屋の中に入り、床板を引き剥がして原本を取り出したことを確認してから、ホームズは侵入者と対峙する。
その人物とは、ジョーゼフ・ハリスンだった。
ホームズは原本をフェルペスに返す。
そしてフェルペスとワトスンに、どうやって原本を取り返したか、詳しく説明した。
ハリスンの目的は、原本を取り返すだけだったので、たとえフェルペスがそこに居ても、危害を加えることはなかったかもしれない。
だが自分の目的を果たすためなら、どんなことでもやる人物だとホームズは自分の見解をフェルペスに伝えた。